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レフリングに思うこと

 NZ遠征中のライオンズは、負傷者続出に苦しんでいる。NO8ダラーリオに続いてキャプテンのオドリスコルが肩を脱臼。他数名の負傷者が出て、本国から次々にバックアップの選手が駆けつけている。ところで、25日の第1テストマッチでオドリスコルに危険なタックルをしたとライオンズ側が指摘していたウマンガとメアラムはおとがめ無しになった。第2テストは7月2日、JSPORTSはライブでこれを放送。僕と藤島大さんで解説します。お楽しみに。

 きょうは長いっす。先日の関東学院と早稲田の試合もJSPORTSで放送されたが、解説の藤島大さんが言っていたとおり、選手がレフリーに文句を言いすぎているように感じた。これは海外から来た選手が最初に感じることらしいが、日本ラグビーはキャプテン以外の選手がしゃべりすぎるのだ。レフリーに意見を言えるのはキャプテンだけ。それがラグビーの原則であり、選手もわきまえてもらいたいと思う。海外のトップレベルの試合を見れば一目瞭然で、不服でも素直にレフリーの指示に従う姿が当たり前である。僕は当日の小野塚レフリーは悪くなかったと思う。どんなレフリーにもミスはあり、ルール解釈の違いなどは、試合前、試合後に互いに議論すべきで、試合中はレフリーの笛に従う。そうでなければ試合は成り立たない。選手が文句を言っていると観客もレフリーに不信感を持ってしまうものだ。

 僕は月イチでラグビーメーカーの老舗セプターのHPにコラムを書いているのだが、昨年末、レフリーのことについて記した。長くなるが、割愛して紹介したい。これはレフリー批判ではなく、応援のつもりだ。近年、海外と日本のレフリー交流も盛んに行われ、若いレフリーたちが積極的に海外で修行しているし、毎年、海外からトップレフリーがやってきて日本のレフリーと議論している。努力は続けられている。日本のレフリングのレベルは確実に上がっていくと信じている。レフリーがいなければ試合はできない。レフリーに対する感謝を、選手達には忘れてほしくない。この前提の上で、大いに議論してもらいたいのだ。

【セプターHPコラムより抜粋】
 子供の頃、近所のおじさんでレフリーをしている人がいた。中学時代、私は友人と早朝ランニングをしていた。薄暗く肌を刺すような冷たい空気の冬の朝、よくその人に会った。日々トレーニングを積んでいたのだ。仕事をしながら早朝に走り、土曜、日曜は試合の笛を吹く。交通費程度の謝礼とお弁当でどこへでも行く。ラグビーが好きだから。選手が懸命に試合をする姿を見るのが楽しいから。それがレフリーの喜びだろう。ラグビーの歴史をたどれば、発祥当時、レフリーはいなかった。反則が起きると選手同士が話し合っていた。それでは無理があるから、信頼できる仲裁人に両チームが合意のもとに立ち会ってもらった。レフリーは選手たちに依頼され、その試合を見守る立場なのである。
 ところが、レフリーへの批判が最近とみに増えている。批判の多くは当事者チームから噴出している。信頼関係が崩壊しているということだ。トップリーグの発足や、日本代表の契約選手制度にともない、フルタイムでトレーニングを積む実質プロ選手は増えている。海外からやってくるコーチはほとんどがプロだ。いまだアマチュアがほとんどのレフリーとは、ラグビーを研究する時間がかけ離れている。当然、レフリーの癖すらも研究され、試合の流れを寸断する笛、一貫性のない判定は非難の的となる。
 冒頭の通り、レフリーの方々の純粋な気持ちは理解しているつもりだ。目の前の反則を見逃せば、立場が揺らぐことも知っている。しかし、心あるレフリーのみなさんを後押しするために、あえて書きたい。ラグビーの主役は選手である。選手が気持ちよくプレーできるレフリーこそが、高い評価を受けるべきだ。試合に大きく影響しない反則、危険ではない反則は、見逃していいのである。トップリーグのNECと神戸製鋼の試合は、NECの予想外の大勝だった。レフリーは、NZ協会のリンドン・ブライさん。両チーム併せて、反則は10個である。日本のレフリーが吹く試合は30個を超えることが多いのにだ。日本の多くのレフリーが声高に叫ぶ「ハンズオフ! ロールアウェイ!」などの言葉もほとんど聞こえない。淡々とした笛だった。それでも選手たちは我慢強く反則せずに戦った。「レフリーが戦わせてくれた」(NEC高岩ヘッドコーチ)。声が少ない方が選手自身がモラルを保てるということが証明されたレフリングでもあった。印象的だったのは、一瞬ノックオンの笛を吹きそうになった時に、手を引っ込めて我慢した姿である。できるなら、彼らにプレーを続けさせてあげたい。ラグビーへの愛情があふれていた。
 数年前、日本協会会長だった川越藤一郎さん(故人)にこんな話を聞いた。「ラグビーなんて、競技規則の文面通りに吹いたら、反則だらけですよ。でもね、ラグビーの規則はLAWと言いましてね。法なんです。(ラグビー発祥の)英国の法律は習慣法だから、ケースバイケースで適応が変わるんですよ。日本人は法律を厳格に受け止めすぎるんです」。競技規則の文面通りに吹く必要はないのだ。規則をうまく操って一貫性のある笛を吹き、選手の抗議に心を乱すことなく、言葉はあくまで優しく丁寧に、安全でフェアでボールが動き回る魅力的な試合を演出する。選手を、試合を、生かすも殺すもレフリー次第。ラグビー人気上昇の鍵を握るのは間違いなくレフリーである。
 周囲も、素晴らしいレフリングには賞賛を。選手とファンが選ぶベスト・レフリー賞もトップリーグは創設すべきだ。彼らのステイタスを高めて、尊敬される存在にしていかなければ素晴らしいレフリーは生まれない。選手とファンが支持するレフリーこそ、いいレフリーである。選手たちが織りなす素晴らしいプレーに思わず笛を吹くのを忘れる。そんな人間味あふれるレフリーに会いたい】

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    「日記」カテゴリの記事




    コメント

    一部修正します
    試合中のレフリングに対する批判→試合中のレフリング批判

    投稿: PIYO | 2005年7月 7日 00:30

     レフリングを語ることに対するタブー。いまや一体そんなものがどこにあるというのでしょうか。もはや限りなく希薄化し消滅しかかっています。
     90年代前半あたりから「ラック・モールの横をすり抜け、相手選手の前方に居残り、あるいは相手選手をつかむなどして妨害する」行為が始まりました。このプレイに対して一時期かなり甘い裁定があり、このあたりから、選手・指導陣の側にある種の増長が見られだしたように思います。
     ここ数年は、サッカーの悪しき影響か、観客のブーイングはもちろん、選手がつかみかからんばかりにレフリーに文句を言うシーンが増えてきています。各選手は、サッカーの競技規則もレフリーへの抗議を全く許してはいないという事をきちんと認識すべきでしょう。
     一方には極めてフレンドリーでありながら、初見から18年後にわたる今に至るまでノックオンとスローフォワードとオフサイドの判定が甘いトップレフリーがいます。もちろん選手たちはよくわかっているようなので、ギリギリのプレイをしてきます。さすがにこれもどうかと思います。
     厳格か寛容(ぼんやり)かという問題よりも、レフリーは自信を持ち、かつ意固地にならないこと。これが一番重要だと思います。 試合後にはビデオを見るなり会合なりで確認されているのでしょうが、試合以外の場面で自分に対する批評をチェックしたり技術確認をする機会を増やすことには賛成です。
     そして、試合中のレフリングに対する批判はやはりタブーであるべきで、この部分に関してはもっと厳格であるべきでしょう。

    投稿: PIYO | 2005年7月 7日 00:25

    レフリーを聖域としていてはいけないと思います。信頼の基になるのは、相手に敬意を持った上でのストレートなコミュニケーションです。選手は常に評価の対象となることによって成長します。レフリーも同じだと思います。しかし、今のようにレフリーイングを語ることにタブーの感覚があっては、歪んだ形のものしか出てこないと思うのです。海外のメディアでは「○○レフリーの一貫性のない笛のせいで、試合が台無しになった」などの報道は珍しくありませんし、選手やコーチが試合後の会見でレフリーについて言及するのもよくあることです。レフリーがプロ化している点を見過ごすことは出来ませんが、相互に信頼感があるから出来ているのではないかと感じています。日本でも、単に「あれはミスジャッジだ!」と騒ぐのではなく、建設的なレフリー批評があって然るべきではないでしょうか。ただ、キャプテン以外の選手が試合中にあーだこーだ言うのは大嫌い!指導者がきちんと躾をして欲しいですね。

    投稿: N山 | 2005年6月29日 23:06

     村上さん、すばらしい文章ですね、気持ちがいっぱい詰まっていて読んでいて感動しました。
    また、試合の結果時よりも多くのコメントが今日のBLOGにあったことでここに集う人たちの
    気持ちが熱く伝わってきました。
     早稲田・関東戦は見てないのですが、今年の大学準決勝後の春口監督のコメント
    「あの判定は納得できない、納得できない」と声を振るわて抗議されていたのを思い出しました。
    少し違和感を憶えました。
     全国放送の注目を浴びた試合後の監督のコメントだけに影響の大きさを感じて欲しいものです。
    できたら今回のBLOG読んで頂きたいな。

    投稿: 瑞穂 | 2005年6月29日 19:30

    僕もこの試合の放送を観た時には確かに判定に付いて「あれ?」と即座には思いました。難しい事ですが選手には自制心を持って欲しいです。この試合がトップチーム同士の試合でしたので、村上さんがこのブログで取り上げる意義は大きいと思います。対戦相手とレフリーを尊敬(尊重)しなくてはスポーツは成り立ちません。その事を競技関係者とファンは再認識する必要がありますね。

    追記:あんとんさんのコメントにありますが、ディオン・ミュアはサニックスから居なくなってしまうのでしょうか?トップリーグで彼の活躍を楽しみにしていただけに、何とか日本に残留して欲しいです。(今季の日本代表で活躍したパーキンソン、ワシントンの去就も心配です)

    投稿: 軍曹 | 2005年6月29日 17:50

    女性のレフリーもちろんいらっしゃいますよ。女子ラグビーの試合とか、確か、Wカップを吹かれた方もいたと思います。女性も頑張ってます。

    投稿: サポーター | 2005年6月29日 15:18

    くだらない質問ですが、レフリーに女性はいるのでしょうか?私は、お目にかかったことはないのですが。

    投稿: FL7 | 2005年6月29日 15:01

    エンターテインメントという目で見る場合、選手は演じ手、レフリーは演出家ということですね。
    双方の理解と信頼がないと、いい劇にはならないのは当然ですね。
    僕も一プレイヤーとして反省せねばならないかもしれます。

    投稿: はまきち | 2005年6月29日 14:00

    私に対する直接の答えではないかもしれませんが、ここまでの長文で、現在の村上さんのレフェリーに対する考えを知る事が出来、非常に満足しております。普段、洗練された海外ラグビーを見慣れているものとしては日本のラグビーに物足りなさを感じており、その原因はチームが洗練されていないのはもちろんの事、レフェリングにも洗練されていないと思っているからです。
    テレビでしかラグビー情報を入手していない不手際な状況で、先のコメントを書きましたが、レフェリーも色々と活動をしているのですね。かくなる上は早急にレフェリーもプロ化する必要が有ると思うのですが、そう考えるのは早計でしょうか?
    早く日本人レフェリーが海外テストマッチやスーパー14、プレミアシップあるいはワールドカップで笛を吹いている姿を見てみたいものです。

    投稿: けんた | 2005年6月29日 13:12

    感動しました。小学生の試合でもレフリーに対して不満を口にする子もいます。恐らくコーチや親のマネをしているのだと思います。子供たちには「ミスジャッチかもしれん、でもそれもラグビーや!」と教えています。でも何よりもまず大人が態度を改めるべきですね。

    投稿: にこにこ | 2005年6月29日 12:14

    私もクラブチームでプレーしているのですが、 私自身 レフリーに対する信頼感が薄くなっているのに 気がします。理由はわかりませんが 試合の負けた理由の一つにレフリングをあげる事がたびたび あったのが 積もって そうなったのかな、、、
    深く 反省します。
    NZのクラブチームの時は 試合後
    3チェアーズのあとに 必ず ONE FOR REF と続けていました。
    レフリーに感謝する気持ち 忘れてはいけませんね。

    投稿: さんぼ | 2005年6月29日 09:44

    レフリーについてのブログ、感動しました。 さて、私にはどうしても村上さんに自慢したいことがあります。私は福岡でアルバイトをしているものですが、その勤め先に大変な人物がやってきたのです。デュオン・ミュアとハレ・マキリです。家族連れで外食に来ていたのです。すぐさま彼らだとわかった私は勇気を振り絞って、話し掛けました。デュオンは気さくに私と話してくれ、明日がブルースでの最後の試合だといっていました。それからサインをもらい、握手をしてもらいました。ハレには、彼のプレーは日本に適しているといいました。とてもいい思い出となりました。ハレとデュオンのこれからの活躍を期待しています。

    投稿: あんとん | 2005年6月29日 07:21

    私はラグビーの魅力の一つとして感じた事は レフリーに対して文句を言わないことでした
    選手が抗議してもキャプテンがそれを制止しているのを見て 他の競技と全然違うと感心したものです
    競技そのものは 激しい体のぶつかり合いだけど 紳士のスポーツだなぁと感じています
    レフリーの判定に文句を言わない そこが好きになった一因でもあります

    投稿: アラレ | 2005年6月29日 06:17

    セプターのこのコラムを読んだ時、「そのとおりだよなぁ。」と、思いつつ読みました。所詮、人間がやることだから、ミスや見逃すこもあるでしょうし、ミスをしたくてしているワケではないと思います。手弁当で全国に飛び回るレフリーの方たちって、良く考えたら大変ですよ。好きじゃなくちゃできません。

    >選手を、試合を、生かすも殺すもレフリー次第。ラグビー人気上昇の鍵を握るのは間違いなくレフリーである。

    同感。だからこそ、日本のレフリングに統一性をもたせ、レベルの向上を望みます。

    投稿: サファイヤ | 2005年6月29日 02:43

    グリーンロケッツvsスティーラーズの試合はストレスの溜まらないとても観やすい試合でした。同時に、反則の少ない両チームにも好感が持てました。点差にはあらわれない昨季のナイス・ゲームのひとつだと思っています。
    レフェリングがゲームの出来をきめるというのは、大げさではないんだな、と僕はこの試合で初めて思い知りました。

    そのくらい重大なレフェリング、それだけに試合後の「すり合わせ」が大切だと思います。各チームも、それぞれのプレースタイルを反映した解釈を持っていましょうから、であれば各々の解釈をフラットな立場でぶつけあうことが健全でかつ将来につながると思います。
    が、そのあたり、具体的にはどのような機会が設けられているのでしょうか。

    投稿: 李白 | 2005年6月29日 02:15

    これは私の個人的推測ですけど、日本のラグビー選手がレフェリーに「かみつく」理由としてプロ野球の影響があるのでは、と思います。日本で間違いなく地上波などいろいろなところで一番放送されているのはプロ野球であり、そのプロ野球ではしばしば監督だけでなく選手も判定に対して審判にかなりきつく抗議する場面がありますよね。どうも今のラグビー選手ってプロ野球のそういう「習慣」に「毒されている」のでないかと思うんです。
    野球ってごくまれに守備妨害や走塁妨害みたいな反則がありますけど基本的に「ストライクかボール」、「アウトかセーフ」、「フェアかファウル」などの二者択一の判定だけでそんなに複雑じゃないですから際どい判定に抗議しても試合は成り立ちますけど、ラグビーの判定は野球とは比べ物にならないくらい複雑ですから際どい判定にその都度抗議してたら抗議だらけで試合にならなくなるのは自明の理ですよね。「判定に文句があるのなら試合後に訴えて、試合中はとにかく従う」ということを徹底してほしいものです。

    投稿: 神戸ファン | 2005年6月29日 01:02

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